2010年に開始されたEUのデジタル社会化プログラム「DigitalAgenda for Europe」でAIに関する直接の言及はないが、R&Dテーマには、「Robotic」などAI関連のものが見受けられる
具体的なR&D支援策としては、EUにおけるR&D支援プログラムである「第7次EU研究開発フレームワーク計画(Framework Program-7:FP7)」と、
その後継プログラムとして2014年から実施されている「
Horizon 2020」がある。
EUにおけるトップクラス研究拠点政策としては、将来重要となると考えられる知識領域において大規模かつハイリスクな研究を進めることを目的とした
FET Flag-shipsというプログラムがある。
2014年から2020年までの期間を対象とする研究開発プログラムの「Horizon 2020」の予算総額は約800億ユーロに上る。
同プログラムは、欧州2020フラッグシップ・イニシアティブである、イノベーション連合(Innovation Union)の実施の一環に位置づけられていた。
Horizon 2020には、
「AI」「Robotics」「バイオと創薬」「データ分析と管理」「材料科学」「エネルギー」「農業革新」「光通信」「航空宇宙」といった多くの領域に予算が割かれている。
ロボティクスでは主に
──高度な制御アルゴリズムを用いて合目的性、認知能力、柔軟性、従順さ、双方向性、操作性等、ロボットに求められる基本的な機能の向上を図る
──以上の成果に基づき、産業界での多様な用途に適合させるデモンストレーションを実施
──評価基準の共有のため、業界共通のハードウェア及びソフトウェアのプラットフォームを提示する
データ分析では主に
──多言語、マルチモーダルなデータポータルからの多様なオープンデータの最適な処理方法の提示に関する協同プロジェクトの実施
──協同プロジェクトによる産業界に適用可能で汎用性の高いベンチマーキング方法の提示
AI関連の開発戦略を調整する政府の組織として
- )欧州委員会研究開発総局
- )欧州委員会通信ネットワーク・コンテンツ・技術総局
などがある。そして欧州の民間における連携事例としては、EU加盟諸国を中心とする欧州各国のAI関連団体ミーティングを行い、1982年に設立された
ECCAI(European Coordinating Committee for Artificial Intelligence)が存在し、2016年1月の時点での参加団体の総数は28に達する。
加えて、学術的な情報交換を目的として、2年毎に開かれる欧州人工知能カンファレンス(European Conference on ArtificialIntelligence)が存在する。
EU主導の研究活動として、FP7の枠組みで2012年3月から2年間にわたって実施された「RoboLaw−欧州における新興技術規制:ロボット技術に対する法と倫理」が挙げられる。
FET Flag-ships内においては、2013年の1月に「
ヒューマン・ブレイン・プロジェクト(HBP)」という脳研究プロジェクトに対し10年間で各10億ユーロの資金配分が決定されている。
ヒューマン・ブレインプロジェクトでは、欧州20ヶ国から121の大学・国立研究所・企業からなるコンソーシアムを形成し、脳をシミュレーションするための基盤ソフトウェアやアルゴリズムの開発、脳に関するデータの収集を進める。
計画は2023年までとなっている。計画の中心としてスイス連邦工科大学、独ユーリッヒ研究所が挙げられる。
FET Flag-shipsでは、脳研究のほかに量子技術を新材料の探索に活用する技術開発を進めている。
欧州連合は、2023年以降より、GPTシリーズをはじめとする自然言語処理技術の急速な発展を受けて、AIに対する包括的規制法案を提出している。最も許容できないリスク一覧として
- 個人個人の能力や学歴、決済履歴などからランク付けを行うスコアリングアルゴリズム
- 「リアルタイム」遠隔生体識別アルゴリズム(顔認証など)
- 犯罪予測と法執行
- 精神的、心理的技法を用いたAIによる誘導
- 難民の受け入れ判断
- 送電網や銀行通信網、水道やガスなどの重要インフラの管理
- 偽画像や偽文章を生成できる一連のAIソフトの流通
- 手術用ロボットや、防衛用兵器への自動判断AI
これら上位4つは禁止され、その他は一部が規制される見通しである。EU在住の国民に対し、これらの違反が認められるサービスが提供されると巨額の制裁金が課され得る
完全な法案の施工時期は、2024年後半までを予定している。深層学習を使っていなくても、人間が設計及びチューニングした事例条件ベース判断、統計確率的ソフトを用いている場合でも違反となる。