人工知能の開発体制～日本の研究動向～

━━汎用人工知能(AGI)の研究動向 "Research trends in artificial general intelligence""通用人工智能的研究趋势""强人工智能的研究趋势""Strong AI"　2024

2014年、文部科学省が脳研究プロジェクト「Brain/MINDS(革新脳)」を発足。
https://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1332...
中核研究拠点である理研CBSが主導し、全国の大学,医学系研究所等が協力し国を挙げて脳の全容解明を目指す計画である。
2023年が計画満了となっている。
文部科学省は、革新脳の計画がまもなく終了するために、令和6年以降のプロジェクトとして「脳神経科学統合プログラム」を立ち上げる準備と協議を行っている。

翌年2015年、元ドワンゴ人工知能研究所の山川宏、松尾豊(東京大学教授)、理研BDRの高橋恒一らが共同で、非営利法人「全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)」を設立。
機械学習,人工知能,計算論的神経科学,認知科学を統合し、AGI開発に繋がるアーキテクチャを脳からインスパイアすることが第一目標の組織である。

WBAIはBrain/MINDSと連携し、脳から得られた知見をアルゴリズムに落とし込むプロジェクトを2016年からスタートしている。
連携機関はOIST(沖縄科学技術大学院大学),WBAI,理化学研究所BDR,理化学研究所CBS,京都大学,電気通信大学,PFN等多岐に渡る。
https://wba-initiative.org/1405/
https://www.oist.jp/ja/news-center/news/2016/7/4/2...

脳のどの部分を解明する必要があるか

Brain/MINDSは、研究対象としてマーモセット脳を選定し、解剖学的な解析を進めている。
https://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1409...
まず2019年までを目標に、マーモセットの全脳規模マクロ構造と活動マップを作成する計画が進行中である。
超高磁場MRI、光学顕微鏡、拡大透明化など、様々な技術を活用し研究を進めている。
そして2024年までに、ニューロンレベルで全脳を解析するという計画を挙げている。
Brain/MINDSプロジェクトの中で得られるマーモセット脳の拡散MRI画像や連続切片蛍光顕微鏡画像を基に、神経回路の構造同定を全脳レベルで行うアルゴリズムの開発を、京都大学の大羽成征氏が担当している。
解析が完了した構造同定データは、全脳シミュレーター開発部門に提供される。全脳レベルとは言うものの、詳細なレベルでの接続図ではない。あくまで推定である。
http://www.rist.or.jp/sc/report/h30/h4-1_h30.pdf

理化学研究所　脳神経科学研究センター　触知覚生理学研究チームは、広視野・高解像度・高速撮像・高感度・無収差を同時に満たす世界初の2光子顕微鏡「FASHIO-2PM」を開発したと発表した。
https://www.riken.jp/press/2021/20210420_1/index.h...
これを用いて、カルシウムイメージング法により、マウス大脳皮質2層に存在する1万6000個以上の神経細胞の活動を、9mm²の単一視野面から7.5Hzの撮像速度で高感度に測定することに成功したという。
また、機能的結合強度に基づいてネットワーク構造を解析したところ、同一脳領域内における機能的な短距離結合が存在するとともに、脳領域をまたぐ長距離結合を発見。
これにより大脳新皮質のネットワーク特性の一部が明らかになったという。

一方WBAIは、大脳皮質～大脳基底核～小脳までを含む全脳規模でシミュレーションし、脳の動きを大規模解析させるための準備を行っている。
大脳皮質は理研CCSの五十嵐潤氏、小脳は電通大の山﨑匡氏、大脳基底核はOISTの銅谷統括氏がそれぞれ開発を担当している。
独ユーリッヒ研究センターが開発する神経回路シミュレータプラットフォーム「NEST」を一部利用する。※欧州のHuman Brain Projectと連携
最終的に脳全体を統合して実行するシミュレータの開発は、OISTの銅谷統括氏が担当する。
シミュレータの開発はBrain/MINDSの知見を取り入れながら段階的に開発を進めている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjsai/JSAI201...

しかし、神経科学の知見がまだ浅く、実用的な機能をリアルタイムで実現できるほど精密なシミュレートができるわけではない。
脳では、個々の神経細胞は様々なイオンチャネルを発現し、それらによる膜電位の複雑な応答特性を持ち、
その神経細胞が膨大な数の結合を介した相互作用によって情報処理を実現している。
樹状突起の構造を利用した計算、情報表現における発火の頻度やタイミングの使い分け、グリア細胞の影響など、よくわかっていない。コネクトームも霊長類では未だに解析できていない。
マウス全脳レベルであれば、米国のプロジェクトによって神経回路マップと脳細胞のタイプ別カタログが2028年までに完成する見込みなので、実用的なシミュレーションが実行可能であると考えられる。
2019年現在、アレン脳科学研究所が蓄積した神経接続特性データを利用して、マウスの体性感覚皮質の一部、第一次視覚野のシミュレーションに成功している段階である。

スイスのスパコンを用いた実験

そこでシミュレータの開発に並行して、脳型計算基盤ソフトウエア「BriCA」を開発中である。
https://github.com/wbap/BriCA1
BriCAコア(実行環境)とJSON形式のBriCA最小記述言語の開発は理研BDRの高橋恒一氏が指揮を執っている。コアの機能は実行速度が速いC++で記述し、学習器の拡張はPythonで行えるようにする。
BriCAは、WBA実装のために複数の異種の機械学習器を同時に動作させ、それらを適切かつ効率的にスケジューリング、同期、通信させる実行機構を備える。
個々のニューロンレベルで実装するのではなく、「脳器官」のレベルでアルゴリズムを選択し利用するため実行時のロードにばらつきが出ることが予想される。
そのため同期的な実行では機械学習器が実時間で設定されたインターバルで発火できない可能性があるため、非同期に実行できる必要がある

マーモセット脳(視床-大脳皮質-基底核-小脳)規模シミュレーションは2021年運用開始予定のスパコン「富岳」で実行される予定である。※事前に従来型の「京」スパコンで簡易モデルを実行している
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shinko...
https://wba-initiative.org/wp-content/uploads/2022...
神経発火と伝達作用の反応から学習原理を抽出(モデル化)することは現時点では困難なので、解剖学的データから抽出した接続図から脳の計算機能の仮説を立て、機械学習モジュール開発へ応用し、BriCA実行機構の上に脳のような動作をする機械学習モジュールを実装する。
※学習原理の抽出作業が最も難しいとされる

WBA脳参照アーキテクチャ

全脳シミュレーション

BRA駆動開発の詳細海馬から始めるHCD作成作業

脳の各器官の動作を再現した複数のモジュールを結合し、最終的に全脳規模のアーキテクチャ(脳型AGI)を構築するという計画である。
WBAIは、主に解剖学的構造をリバースエンジニアリングの手がかりとするSCID法を生み出した。SCID法では、対象となる神経回路(ROI)の解剖学的構造と一致するように、体系化された機能階層をソフトウェア仕様として設計する。
その作成方法は、まずROI内のメゾスコピックレベルの解剖学的知識を調査し、標準化された BIF(脳情報フロー)形式データとして整理する。次に、ROI内で実現すべき目的(大機能)を設定し、その目的を実現するために機能分解の候補を複数個構築し、その中から解剖学的構造との整合性を満たす体系化された機能階層を選択し、HCD(仮説的コンポーネント図)形式データとして登録していく。
2030年までにAGIを構築するという目標を掲げている

電通大の山﨑匡氏によれば、日本の小脳研究は世界トップレベルにあり、
世界一精緻な小脳のモデルが既に構築済みであるという。
2018年、理研に設置したPEZYグループのExascaler社製スパコン「Shoubu」上で、人工小脳のモデルを実行した。
結果、ネコ1匹分の小脳に相当する規模を実時間でシミュレーションすることに成功したという。

産総研の人工知能研究センターに所属する一杉裕志氏は、大脳皮質の動作理論解明が最も重要だと指摘する。高次知能(認識、意思決定、高度な運動制御、創造的思考、推論、言語理解など)が、たった50個程度の領野のネットワークで実現されているとする。
主にヒト脳の言語野や前頭前野がより高度に発達しており、ヒト特有の知能に関与していると考えられる。
一杉氏は、大脳皮質がある種のベイジアンネット、及び自己組織化マップのような動きをしているという仮説を立てている。
現状の大きな課題として、ヒト脳の大脳皮質のコネクトームが詳細なレベルで解剖学的にわかっていないという問題がある。ミクロな伝達反応もわかっていない。そのためマウス等のヒト以外の哺乳類の神経科学データを参考に原理を絞り込んでいく。

全脳アーキテクチャイニシアチブでは、米国などが進めている脳研究の成果を記述した神経科学論文の調査に、GPT-4などの大規模言語モデルを活用することを試みている。
まず、対象となる神経科学文献に記載されている脳部位の情報、つまり「グラフ構造におけるノード」に関する情報をLLMで実装された”エージェントA”に文献中の文章と適当なプロンプトを与えて抽出する。
次に、抽出した脳部位に関する機能的な記述、および抽出した各脳部位間の機能的な記述について、もう一つのLLMで実装された”エージェントB”に文献中の文章、適当なプロンプトおよびエージェントAで抽出した脳部位のリストを与えることで抽出する。
複数のエージェントにタスクを分担させて情報抽出を行なっている状況である。また、文章情報だけでなく、図表についてもBIFの構築に役立つような情報抽出プロンプトの開発を進めている。
https://wba-initiative.org/21787/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaisigtwo/20...

運動野と感覚野の連携モデルやシミュレーションは、OISTの銅谷統括氏が担当している。

WBAIは、実験的に「生物学的妥当性に配慮した複合学習器実装の試み」と題し脳型として最低限動作できるモジュール間の逆誤差伝播を行わない形で、３つの学習器からなるアーキテクチャを実装した。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaisigtwo/20...

━━人工意識の研究動向　"Artificial Consciousness"

日本はAGIの研究に加えて、人工意識(AC)の研究も並行して行われている。
意識の研究を行っている組織の一つとして、アラヤ(ARAYA)が挙げられる。
同社CEOの金井良太氏は、意識の機能は「反実仮想的な情報生成」であるという仮説を立て、英UCLの神経科学者カールフリストン氏が提唱する「自由エネルギー原理」,
及びジュリオトノーニ氏が提唱する「統合情報理論」の二つを基に、AIに意識のモデルを実装するという研究開発を行っている。

トノーニ研や、理研BSIの甘利俊一氏と連携し、情報幾何学や数理現象学などの高度な数学を応用し意識理論の基礎研究を進めている。
意識理論のほか、自発的動機や好奇心の実装も目標として掲げている。「グローバルワークスペース理論」の研究も進めている。
グローバルワークスペース理論では、視覚刺激によって後頭葉や側頭葉が活動しただけでは意識に上らないとする。視覚情報が(思考や作業記憶に関わっている) 前頭葉や頭頂葉に届いて脳が広域的、且つ持続的(リアルタイム)に活動したときにはじめて意識に上るとされる。

2022年1月、理化学研究所は脳の神経回路が「自由エネルギー原理」に従っていることを明らかにした。
https://www.riken.jp/press/2022/20220114_3/
神経生理学的に妥当な"コスト関数"を神経活動の微分方程式を積分することで逆推定し、それが自由エネルギー原理のコスト関数と等価であることを数理的に同定したという。
統計学者が行うように、観測データから背後の原因をベイズ推論することを自律的に行っており、そうして外界を模倣することが”神経回路の普遍的な特性”であることを証明できたという。

2018年9月、株式会社アラヤは神経ネットワーク内における統合情報量(Φ)を計算して意識レベルを測定する分析ソフトウェア「Practical PHI Toolbox」を開発した
https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1004654
https://figshare.com/articles/code/phi_toolbox_zip...
アラヤでは、スチュワートハメロフ氏らが主張する量子脳理論(いわゆるOrch OR理論)に対しては懐疑的であり、この方向性では研究を進めていない。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnmol...

2020年から、科学研究費助成事業における学術変革領域研究(B)において豪モナシュ大学の土谷尚嗣教授率いる研究プロジェクト「クオリア構造と脳活動から得られる情報構造の関係性理解」がスタートしている。
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/pigeon-web...
このプロジェクトでは、脳活動 r から生み出される意識を C とした時、r と C との関係性を明らかにすることを試みる。すなわち、r から C への「数学的な変換 C = g (r) 」を明らかにする。
まず視覚クオリアの特徴づけを行うため、一瞬に感じるクオリアの構造を、クオリアと他のクオリアの大規模な類似度判断を通じて明らかにする。クオリア同士の類似度判断行列を基にして、高次元空間におけるクオリア同士の距離を推
定し、クオリア同士の関係性を記述した数学的な構造が構成できるかを検討する。
次に、視覚クオリアと脳活動の因果関係を明らかにするため、薬理負荷操作を用いて脳活動を人為的に変化させ、クオリアがどのように変化するかを調べる。
また、脳活動データから情報構造を抽出する作業を行い、最後にクオリア構造と情報構造の対応関係を検証する。

2022年3月、株式会社アラヤはイヤホン型脳波計を手掛ける「VIE STYLE」と共同開発を開始した。
内閣府ムーンショット計画で進行中のプロジェクトを併せて、アラヤが持つ脳波解析技術、エッジAI技術をイヤホン型脳波計と融合させる。
これにより小型のブレインマシンインターフェイスの実現を早める。
https://www.araya.org/publications/news20220315/

━━計算ハードウェア

MN-Core
光量子コンピュータ、および超電導量子ゲート方式
Neuro Synaptic Processing Unit (NSPU)

2019年現在、実用的な深層学習用プロセッサを開発中である企業はPFNのみである。
PFNは、深層学習の特徴である「行列乗算」の並列実行に特化した専用チップMN-Coreを2020年までに開発を完了させると公表している

https://preferred.jp/ja/projects/mn-core/
またMN-Coreを大量並列させた自社研究専用スパコン「MN-3」を2020年春に稼働させる計画を掲げている。

2020年6月、試行運用を開始したMN-Coreスパコンは、省電力性能を競う指標であるGreen500において世界1位を獲得した。

一方量子コンピューターの分野では、東京大学古澤研究室が同分野で先陣を切っている。
2017年9月、古澤明教授らのグループは「光の量子テレポーテーション回路を使った汎用量子コンピュータの基本原理を発明した」と発表
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20170922/index.h...
2019年5月には、「最小限の光回路でさまざまな光の量子もつれを効率的に合成できる回路を開発した」と発表している。
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20190518/index.h...

古澤教授らが開発した方式は、Googleのような超電導量子ビット素子方式ではなく、絶対零度まで冷やす必要がない光の量子を利用している。
そのため常温で動作可能としている。
古澤研はNTTと共同で、安定的に高品質な光の量子を生成するため、光量子専用光源の開発を進めている。
光源の量子ノイズを７５％圧搾して多数の光子の多重量子もつれ状態を実現した。
https://group.ntt/jp/newsrelease/2020/03/30/200330...
このマシンが完成した暁には、暗号解読(素因数分解,離散対数問題)や組み合わせ最適化のみならず、量子多体系の数値解析や機械学習も含めあらゆる計算問題を実行させることが可能だとしている。量子もつれ状態にある光子で１０億規模の量子ビットを作り、電子計算機のルックアップテーブル方式のように計算済みの参照表を使って計算結果を求める。
古澤明教授は「本当に必要なのはクロック周波数が速く並列処理可能な汎用の計算機。誤り訂正もできないNISQ計算機ではない」と主張した。また、この光量子方式は光ファイバー通信との相性がよく、NTTが進める光電融合チップ(IOWN)の技術と組み合わせることで、より効率的で省電力な計算ができるようになると期待される。

加えて、文部科学省光・量子飛躍フラッグシッププログラム（Q-LEAP）の資金助成のもと、理化学研究所・富士通・NTT・産総研・NICTの5者らは、量子ゲート方式の超電導量子チップを作成し、2024年までに4機の試作機を完成させる。
富士通は富士フィルムや三菱ケミカルと協業し、化学計算を行う専用アルゴリズムを開発中である。
富岳のようなスパコンと量子コンピューターを連携させることで、得意なアプリケーションを状況下に応じて実行環境の使い分けを行うソフトウェアも同時に整備する。

また、汎用人工知能(AGI)を構成する一連のソフトウェアを実行するために特化した、AGI専用ハードウェア「Neuro Synaptic Processing Unit」の開発が、PEZYグループで進められている。
大脳新皮質の計算原理をモデル化したマスターアルゴリズムや、その他脳型統合モデルをハードウェア上に実装する計画である。

2020年代前半に試作機を作成し、2030年までに製品として実用化させる予定である。

━━日本政府、企業の科学技術政策(およびIT政策)

文部科学省では、急速に発展するAI&データ分析技術に対応するため、「AIP（Advanced Integrated Intelligence Platform Project）
：人工知能／ビッグデータ／IoT／サイバー統合プロジェクト」を2016年から開始。理化学研究所にAI研究センターを新設した。その他、経済産業省や総務省等も、産総研やNICTなどにAI研究機関を新設させている。
ネイバー傘下、LINE AI事業執行役員の砂金信一郎氏は、内閣府 IT総合戦略室政府CIO補佐として日本の行政のデジタル化を推進している。また政府はデジタル庁を立ち上げ、給付金や確定申告といった各種行政申告をIT化するマイナンバー事業を進めるため、富士通Japanがこれらプラットフォームの設計開発運用を行う契約を結ぶ。
富士通は、国家情報のデータ連携基盤として「レジストリカタログ」をAWS（Amazon Web Service）上に立ち上げ、データ活用の土台となるシステム基盤の構築を完了した。
官民のデータ活用を促す、データ戦略の土台となるシステムが完成し、標準化された質の高いデータを提供するカタログサイトの整備により、利用者（行政機関/民間企業等）にとって必要なデータを簡単に入手できるようになる。

2023年以降、日本政府は「AI戦略会議」を松尾豊氏の主導のもと開いている。
また米Palantir社とも連携し、政策判断や防衛,安全保障監視業務の効率化を支援するRPAやデータマイニングソフト群を防衛省や経済産業省に導入するため協議中である。
2023年、防衛省と防衛装備庁は、米国国防総省(空軍)と共同で、自律型無人戦闘機の共同開発を数年間行う契約を締結した。

NTTグループのNTTデータは、ローコード開発ツール「intra-mart」を設計し、複数RPAの一元管理や連携、業務ロジックのGUI開発、顧客情報の管理、営業計画、文字認識による紙文書のデータ化などを支援するDXツールを多くの国内大手企業に導入する。
収支報告書や源泉徴収、簿記など、経理部門の業務改善を支援する会計フロントのシステムも統合されている。また、米国に本社を構えるUiPath株式会社が、日本向けのRPAツール導入を支援する。
すでに、三井住友銀行、大東港運、東京証券取引所、SBI証券、NTTコム、あいおいニッセイ同和損害保険、伊藤忠商事、アサヒグループ、日本通運、KDDI等の大手各社が導入を決定した。

またNTT研究所は、東京に開発拠点を置くSakana AIと提携し、「業務特化型・小規模言語モデル」の開発と研究を行っている。それぞれの領域のタスクにチューニングした小型LLMを作ることで、余分な能力と知識を排除し、省電力で効率的なLLMを設計する。

2019年3月、日本行政機関の一つである内閣府は「ムーンショット型研究開発制度」を創設した。
平井卓也(科学技術政策大臣)率いる総合科学技術・イノベーション会議の下、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進するための制度である。
関係省庁や産業界の提案、有識者からの意見を収集し、2019年5月第三回目の会議においていくつかの検討素材が提案された。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/moonshot/dai3/si...
その中でもシンギュラリティー誘発に繋がる3つの研究目標が見受けられたので以下に挙げる。

ノーベル賞級の科学的発見を自律的に行うAI及び自動化システムの開発(理研,産総研,東大)
全神経回路網とその関連組織を完全デジタルコピー及びモデル化(理研,京都大)
汎用型量子コンピューターの実現(古澤研究室,NTT,理研)

動画

いずれも2050年までの目標達成を掲げている。
オムロン子会社のオムロンサイニックエックスの牛久祥孝氏らの研究チームは、公開されている英語の科学論文を収集して、科学論文をAIに理解させる取り組みを2022年11月から始める。
自動実験ロボットは、理化学研究所生命機能科学研究センターのほかに、協和キリン・中外製薬・アステラス製薬・つくばバイオ研究センターといった組織が導入を決定している。

自由民主党デジタル社会推進本部は7月27日、「AIの進化と実装に関するPT(プロジェクトチーム)」(AIPT)による会議を開いた。
同会議には、経済産業省、日本マイクロソフト、AWS Japanが参加し、LLM(大規模言語モデル)の開発・利用を推進するために必要となる計算資源の不足と調達をメインテーマとして意見交換が行われた。
2023年7月、マイクロソフトは国内の東日本リージョンのデータセンターへAzure OpenAI Serviceを提供するサーバを設置したと発表した。これによりGPT-4等の実行を国内で完結できるようになる。

加えて経済産業省が主導して始動させた国産の生成AI開発プロジェクト「GENIAC」では、2024年2月2日、PFNの子会社やSakana AI、東京大学松尾研ELYZAおよびABEJAなどの７者に対し、Googleのスパコンを無償で利用できるよう交渉を進め支援を決定した。
NVIDIA H100を搭載したGoogle Cloud A3 GPUスーパーコンピュータの貸し出しとなる。

───物理学─────────────────────────────────────────────────────────────
理研は地下の力学式である「弾性体力学の法則」を満たすように深層学習モデルを学習させ、地震に伴う地殻変動の予測とパラメータ推定技術を開発したり、気象庁と共同で気象数値モデルの物理過程式の改善にAIを活用する計画を立てている。
統計数理研究所も、地震活動と周辺の力関係、発生周期を統合して確率的に地震を予測するシステムの実証実験を進めている。

深層学習は、観測値から見えない潜在物理量を推測したり、偏微分方程式パラメータの探索を行うことができるため、これまで数値シミュレートの欠点だった「逆問題」を解決することができると期待される。

東京大学カブリ数物宇宙研究機構は、機械学習を活用し、宇宙の大規模構造の偏りをもたらした初期の物理パラメータを推定するためのシミュレーション技術を高度化した。
加えて宇宙の基本的枠組みを決める「宇宙論パラメータ」と、得られた「大規模構造との対応関係」を複数の統計学的手法と物理モデルとを組み合わせた方法によって学習するAIシステムを構築した。
銀河の3次元空間上の分布パターンの観測データを、概ね誤差2～3%程度の精度で予言できることを実証。銀河の形成・進化などのより複雑な物理現象を正確に計算するシミュレーションは時間がかかるが、機械学習を適用することで計算時間を削減できる
https://www.ipmu.jp/ja/20200205-DarkEmulator
これにより、ダークマター等の観測困難な物質の量や配置などを予測し、さらには逆算できると期待される。

大阪大学は、実験データの未知の現象から保存則を発見できるＡＩを開発中である。
2024年、核融合科学研究所（岐阜県土岐市）などの研究グループは、核融合プラズマの観測データをリアルタイムで取り込み、プラズマ挙動のシミュレーションの補正に活用することで高精度の予測と制御を可能にするシステムを開発した。
装置内70地点でプラズマの電子の温度や密度を観測し、データを0.4秒ごとに取り込んで予測モデルを補正させて温度上昇を図る。

───生物(バイオ)＆医学─────────────────────────────────────────────────────────────
理研AIPは、非標識の細胞形態情報をAIで高速に判別する技術を開発し、iPS細胞の生死などの状態、分化と未分化、がん化などの非標識判別することができるよう研究開発を進めている。
理化学研究所計算科学研究センターでは、「HPC/AI駆動型医薬プラットフォーム部門」を新たに設置し、医薬品の開発を加速させる化合物AI探索システムを富士通と共同で開発中である。

活性・薬効、ADME、毒性・副作用などすべての好条件を満たす化合物を網羅的なAIシステムを使って探索し、AIが有望と予測した化合物を中心に最適化を進める。
化合物の自動生成や、薬剤ドッキング予測、タンパク質の構造予測、細胞シミュレータなど複数の予測システムを連携させ、医薬品の創成を加速させる。

東京大学の原田香奈子准教授は、ムーンショット型研究開発事業の中で、マウスの頭蓋骨を削り取り、脳表面にヒト臓器のオルガノイドを移植できる手術ロボットを開発中である。
https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/PR/2022/release_2...

PEZY Computingや富士フィルムは、CT検査機器やX線撮像機や内視鏡から得られる診断画像をレンダリングする3Dビューワーや、断面画像から腫瘍や骨折などを検知する、深層学習を用いた画像解析ツールを開発している。
またPEZYグループは、全ゲノム検査解析のためのスーパーコンピューターも開発中である。

───エンジニアリング─────────────────────────────────────────────────────────────
東芝は、理研AIPと提携し、幅広く応用可能な「深層学習の汎用モデル圧縮技術」「箱のサイズに依存しない把持・箱詰め計画の強化学習手法」などを開発した。
2022年12月、東芝は電力市場における当日の取引において最適な入札のタイミングと入札量を算出できる「時間前市場取引AI」を発表した。また、発電所プラントの運転を自動化するAIや、配管と配管支持装置を自動で最適配置できる「3D設計自動化技術」など重要な社会基盤の現場を支えるAIシステムを実装している。プラントの稼働中に配管にかかる様々な力(自重や温度、圧力応力)と耐震基準を満たす強度などを計算し、配管支持装置の設置位置と構造を自動設計できるとしている。

東芝の配管設計自動化ソフトのように、自動車各社や重電各社も、機械エンジニアリングの設計工数をより効率化するため、「モデルベース開発（MBD）」と呼ばれるコンピューター支援設計（CAE）の概念を拡張する形で設計工程のDX化を進めている。
これにより、電子回路設計やその中で動くコード、複数の機械の連携、応力解析などを、研究から実験検証までの全ての開発工程をモデル上で実行することができる。

また本田技術研究所では、畳み込み深層学習LeNet-5をCAEの代理モデルとして用い、画像情報とHIC(頭部傷害基準)の関係を学習させ、車両衝突実験における数値シミュレーションの欠点を補おうとしている。

3D CADツールを手掛ける中央エンジニアリングは、トポロジー最適化という設計手法に機械学習を応用しようとしている。
これまでトポロジ最適化を用いた設計手法では、現場で所望する性能になるまで “制約条件を変えては解析を繰り返す”という作業を繰り返していた。そういう意味では、本当の意味での最適形状にたどり着けないという問題があった。
また、中間密度要素が発生しない結果を出力する際も、制約条件と解析結果の相関が読みにくく、何度も繰り返して試行錯誤する必要がある。
そこで、「制約条件の決め方」に関して、機械学習 (ベイズ最適化) を用いて入力する制約条件とトポロジ最適化の解析結果の因果関係を抽出し、最適結果を効率的に導出するアプローチを採用した。
実行済みの解析結果から確率的広がりを持った回帰モデルを推定し、最も有益そうな解析条件を探索して、その条件でさらに解析を実行する。
加えて、「中間密度要素」についても、同等の解析結果で中間密度要素の少ない解がないかを機械学習 (クラスタリング)を用いて特定する

これらの手法は、金属造形用3Dプリンターや製造ロボット、自動車のフレーム、水力発電タービン、航空機フレーム、住居用3Dプリント建造物の最適設計に応用できると期待される。

三菱重工は、製造するH3ロケットの第1段と第2段を接続する段間部の製造に、自動打鋲ロボットを用いて安価なアルミニウム合金の波板にリベットを打って組み立てる手法を導入した。
元々は航空機のパネルの接合打鋲に使われていた技術である。またH3ロケットエンジンにおける一部部品の造形に金属3Dプリンターを導入する。
従来においてはエンジンの噴射器は約500個の部品からできているとされ、1つずつ部品を作ってつなげるのではなく、3Dプリンタで一気に作成することで、劇的なコストダウンが図れると見込んでいる。
また三菱重工は、陸上自衛隊や海上自衛隊向けに無人ヘリコプター、自律航行型潜水艦の設計製造を請け負い納入している。VTOLも含む。

───化学と材料─────────────────────────────────────────────────────────────
PFNは、ENEOSと提携して原子スケールで材料の挙動を再現し、大規模な材料探索を行うことのできる汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis」を開発した。
事前に物理シミュレーションした膨大な量の原子構造データを深層学習モデルに学習させることで、55元素の任意の組み合わせの原子構造を高い精度で再現できるという。
https://matlantis.com/ja/product

第一原理計算の一種である、従来のDFT計算よりも10万倍以上高速で計算結果が得られる。
既にPFNは、ENEOSのほか旭化成、NIMS、パナソニック、東工大、住友化学、花王などと提携を結び、大手各社は新素材の探索にAIを取り入れ始めている。
これにより、「低温でアンモニアを合成できる触媒」や「次世代電池に最適な固体電解質」の探索、「人工石油」の生成に貢献できる触媒の探索、「太陽電池」の新素材の探索が早まると期待される。
プラを油に戻す「ケミカルリサイクル」や「農薬」の分野にも応用する。
現状のケミカルリサイクルは、廃プラスチックを水素やメタノール、アンモニア、酢酸といった化学工業に使われる物質へと変換するコストが高い技術となっている。

富士通は、理研AIPと提携し、「FUJITSU Digital Laboratory Platform SCIDOCSS」と呼ばれるAI化学文書検索システムを開発した。膨大な論文・公開特許から化合物の物性値や製法を抽出し知識ベース化する自然言語処理技術である。

産総研は、日本ゼオン株式会社と共同で、画像や分光スペクトルといった異なる複数のデータを計測・統合することで、従来のAI技術を適用できなかった複雑材料系(充填剤や添加剤)の特性を予測することができるAIを開発中である。
1日で約10万条件分の複数の計測データの生成と特性の予測結果の出力を可能にするGAN(敵対的生成ネットワーク)を、材料データ科学向けに最適化した。

炭素繊維などを複合化した、強化プラスチックの研究に応用できる可能性がある。

東京理科大は、効率的な液体の混ぜ方(流体混合問題)を自動で学習させるため、強化学習を適用しようとしている。
東北大学金属材料研究所、大阪大学産業技術研究所、理研AIPは、実験・理論・AIを連携させた多結晶材料情報学を創生し、メートルスケールのマクロな材料から、現象を特徴づけるナノスケール領域を効率的に抽出・解析できる一連の手法を構築している。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年以降、EV向けの次世代蓄電池として注目される全固体リチウムイオン電池の材料評価と設計を産学連携で始めるためのプロジェクトを開始している。
これに伴いリチウムイオン電池材料評価研究センター（LIBTEC）を立ち上げ、材料選定はトヨタ、製造プロセスはパナソニック、電池基本設計は日産が担当し、それぞれ分担を進める。
また参加する物質材料研究機構や東京工業大学は、富岳やSPring-8などの実験機器を使用して、粒子接触・界面、劣化など、固固界面をはじめとする全固体LIB特有の化学プロセス機構の解明を行う。

───社会基盤と業務への応用(特化型AI)─────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────
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三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、RNNの一種であるLSTMを利用し、現在の経済指標と過去15年分の為替と株のデータの相関から、日経平均株価の予測を行うことを可能にした。企業の株価指数の予測を行うこともできる。一般商品の市場価格を予測することにも応用できる。
LSTMは長期の時系列データを学習できるモデルであるため、株価の予測を得意とする。

日本ハムは、NTTデータと共同で「畜産動物の育成状況の判定」を行える画像分析システムを開発した。
カゴメは、NECと共同で水や肥料、農薬散布の適切な時期を判断する機械学習システムを開発し、トマト栽培のノウハウ運用を自動化した。
デンソーと立命館大学は、野菜や果物を収穫できる農業用ロボットアームと、自動運搬システム、植物工場の環境制御システムを構築した。
NECは、世界トップレベルの顔認証技術と画像認識技術を有しており、空港やビルの入退出管理や液体(医薬品等)の中の異物混入検知に応用している。

果実収穫ロボット

株式会社アラヤは、製造現場向けセンサーを手掛けるキーエンスと提携し、外観検査用画像処理AIを提供している。また、ドローンを利用した低消費電力で実行可能なインフラ点検用の画像処理AIをKDDIと共同で開発中である。

ドローンと大型重機ロボットをダム建設および監視に活用する大林組とKDDI

IHIは、航空機部品の製造でKUKAの協働ロボを導入し、日産自動車は自動車の製造を目的としたオートメーション工場を栃木県に導入する。建設機械大手のフジタや三井住友建設は、建設現場に深層学習を導入し、掘削作業を自動化したり、トンネル内壁の損傷検知を行う。
大林組は、住宅や大型施設の建造にコンクリート製3Dプリンターを導入する実験を行っている。住友林業は、部材部材や接合部の仕様を選び、構造計算を行う一連の流れを自動化するCADソフトウェアツールを導入する。
清水建設は、ビル建設や施設建設を行う各種施工ロボットの導入を行う。
JR東海は、東芝インフラと共同で自動学習・空調制御最適化機能を備えた指令伝送装置を中央本線の315系鉄道車両に導入した。また、リニア中央新幹線の自動運転導入も2028年までに進める。
JR東日本は、日立システムズと共同で山手線E235系車両に、ATO（自動列車運転装置）の導入試験を開始した。2028年までに全車両を自動運転化する。
PFNは、工場向け産業用ロボット大手のファナックと提携し、箱詰めおよびピッキングを自動化できる協調ロボットを開発した。またENEOSと共同で石油精製プラントの自動運転ソフト設計開発し、すでに運用開始している。

トライアルは、店内・棚前の顧客の買物行動の分析、棚の欠品の有無の検知ができる画像認識システムを60店舗に導入した。セブン＆アイHDは、かご回収や在庫運搬が可能なロボットを一部店舗に導入する。
ドラッグストアのトモズは、調剤に7種9台のロボを導入し、粉薬の調製や錠剤収集を自動化する。スーパー大手イオンは、一部の店舗の厨房にからあげの盛り付けを自動化する弁当向けロボットを導入する。
造船大手の川崎重工と川崎汽船は、船舶の航行運転を自動化するシステムの開発に着手した。すかいらーくHDは、東日本の飲食チェーン店に配膳ロボットを段階的に導入していく。

警視庁および京都府警と神奈川県警は、犯罪予測システムを導入するための準備を進めている。SNSや個人信用情報、監視カメラ、ネット検索＆通話履歴等からの情報を統合解析し、犯罪の発生を検知したり未然に予測することを目標とする。
金融庁は銀行口座とマイナンバーの紐づけを推奨しており、脱税の防止を進める。
NTTドコモは、基地局を結ぶ基幹システム、通信インフラや交換局の障害発生を早期に検知する機械学習システムを導入した。首都高速道路株式会社は、車の逆走や道路の渋滞具合を画像認識(CNN)によって検知,集計するカメラシステムを導入した。

民間気象会社ウェザーニューズは、気温統計補正AIを開発した。
ニューラルネットや重回帰分析によって、気象予測モデル(スパコン)と実際のアメダスの正解データの相関関係を学習
さらに、風の流れ方や地域特性まで変数として捉え、スパコンと実際の世界とのズレを低減させる。

加えて、衛星画像から晴れの領域と曇りの領域を自動判定するAIも開発。日射量の補正を可能にした。これらと気温補正AIを組み合わせることにより、「電力需要予測AI」を開発することに成功
日々の気温の変動によって、エアコンや冷蔵庫などの使用頻度が変わる。
こういった電力の需要を先回りして予測することで、供給する発電所がそれに対応した発電量の調整を行う。
需要量に対して供給量を合わせることで、電気の「周波数」を一定に保つことができる。質の良い電気にするためには、使われる量に応じて発電する量を増減させる必要がある。
またウェザーニューズは、全世界の天候情報を統合解析し、海上の船舶に最適な航路を提案するAIシステム、およびメール送信自動化ツールを導入している。

KDDIが運営するauフィナンシャルサービスは、コールセンター業務にソフトフロント社が開発した言語処理エンジンと自動化ワークフローを導入した。
単純な応対業務では対コスト稼働率 100% を実現し、複雑な業務のみをオペレータスタッフで対応することで、飛躍的な効率化を実現している。
https://commubo.com/commubo-ver3/
また、シスコシステムズもAIと連携したチャットボット機能を備えた、コールセンター自動応答システムを開発中である。

パナソニックコネクトと立命館大学情報理工学部は、大規模言語モデルLLMと世界モデルを組み合わせてロボットを動かすシステムを開発中である。 https://newswitch.jp/p/37414
コードを基に世界モデルの「ニュートニアンＶＡＥ」でロボットの動きを生成。ロボットの視覚映像などを学習し、自分の身体と周囲環境を含むモデルを作る。

佐川急便とロジクラが共同展開するXTORM(サービス名)では、ピッキング作業や出荷業務までを一気通貫で請け負う在庫管理のための次世代倉庫を構築した。
EC事業者は何もせずとも、注文を受けるだけで良い。商品は自動でピッキングされ、注文者のもとに届けられる。
2020年2月に完成した佐川の次世代型大規模物流センター「XFRONTIER（エックスフロンティア）」がそれを実現した。東京都江東区に位置する巨大物流センターは、倉庫スペースと配送センターを兼ね備える。
施設内ではロボットが24時間・365日、不眠不休で稼働するため、1日に最大2万7500件の入出荷を可能とする。
加えて、佐川急便と米国でAIロボティクスソフトウェアの開発等を行うDexterity, Incが協業し、「荷積みロボット」の実証実験を行う共同プロジェクトを発足している。

岐阜市民病院は、一部を除くほぼ全ての診療科で紙の問診票を取りやめ、ユビーＡＩ問診を2023年に導入した。患者が申告した症状に合わせてＡＩが次の最適な質問項目を判断することでより詳細な問診ができるようになる。患者さんの問診結果は、医学用語に変換され、電子カルテに最適化した文章として自動出力されるよう電子カルテと連携できるようになっている。
岐阜大学医学部附属病院は、富士通の電子カルテシステム「HOPE EGMAIN-GX」を使用している。
岐阜大学医学部附属病院では、来院時に患者がiPadに病状などを入力すると、その内容が電子カルテに送信される。
また手術中にCT撮影が可能な、ハイブリッド手術室を導入し、またロボットアームによる正確な操作が可能な「ダヴィンチXi」を導入済みである。今後、AI画像診断やRPAなどのシステムの導入を進める。
新型のCT撮影機は、深層学習を用いた新しい画像再構成技術に対応している。低線量の撮影モードでも空間分解能を維持したままノイズを選択的に除去することが可能となっている。

国立宇宙航空研究開発機構(JAXA)とNTTは、高高度プラットフォーム(HAPS)と静止軌道(GEO)や地球低軌道(LEO)の衛星を統合して光レーザー通信ネットワークで地上無線局までを結び、データ処理する宇宙のICT統合基盤「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」の実現を目指し共同研究を2023年から始めている。
宇宙から地上へ伝送するデータ量を必要な情報だけに絞り、衛星軌道上のデータセンターでAI処理や画像処理を行う技術を開発中である。また惑星探査機の自律運用を実現する省電力なAIシステムも開発中である。
またJAXAは、国際宇宙ステーションにおける科学実験棟(きぼう)エリアにおいて、低重力環境下での生命科学実験を自動化するロボットシステム、認識+プランニングシステムを導入するための検討を始めている。
また船外活動を自動化するためのロボットアームを、国内ベンチャーのGITAIと共同開発中である。ロケット打ち上げシーケンスやエンジンの不具合など、故障診断を行うシステムにクラスタリングと木解析を導入している。

━━スーパーコンピュータ

2014年、文部科学省が次世代スパコン開発推進プロジェクト「フラグシップ2020」を発足。
2021年3月9日、富士通は全ラックでピーク時実行性能0.4 ExaFLOPS/s（415 PetaFLOPS）を達成できるスパコン「富岳」を納入した。
開発＆設計は理研CCSと富士通が担当した。
富岳に搭載される「A64FX」と呼ばれるCPUは、命令セットアーキテクチャとしてARMを採用し、加えてTSMC7nmの製造プロセスを採用し、省電力化を図っている。大量の行列乗算処理に最適な半精度(16bit)演算に対応し、AI処理も高速化できる予定である。
理研は2023年、大規模言語モデルの実行を高速化するため、大量のGPUラックで構成された行列乗算専用スパコン「語岳」の構築を計画中である。構築した語岳は富岳と接続されて運用される予定である。
また理研CCSは米国のアルゴンヌ国立研究所や米Intelとも協定を結び、科学研究専用のLLMや次世代の半導体の共同研究を行う。
2023年11月9日、富士通はプログラム処理実行中でもCPUとGPUを適切に使い分ける世界初の技術「アダプティブGPUアロケーター技術」を開発した。
処理を実行中の場合においても、GPUを必要とするプログラム、CPUで処理しても良いプログラムを、高速化率を予測するなどして区別し、優先度の高いプログラム処理に対してリアルタイムにGPUを割り振る。
https://pr.fujitsu.com/jp/news/2023/11/9.html
加えて、次世代の省電力CPUとして「FUJITSU-MONAKA(仮称)」を2027年までに設計を完了し、TSMCの2nm技術や3Dシリコンフォトニクス技術を活用してチップの製造を予定しているという。

また民間ベンチャーでもスパコンの開発は進められている。
PEZYグループのPEZY Computing社では、「PEZY-SC3」というプロセッサーの開発に成功し、後継となる「PEZY-SC4」プロセッサーを5nm製造プロセスで設計する計画を立てている。

独自の省電力電圧最適化技術、液浸冷却技術、高速メモリ技術、インターコネクト技術などを結集させて高密度で省スペースなスパコンを設計する組織を、複数の法人に分けて設立し運営している。
このPEZY-SC3プロセッサを使いExaScaler社は、2019年までに67ラックで1ExaFlops/sを達成できる「ExaScaler3.0」を構築する予定だったが、
PEZYグループ創業者が2017年12月に逮捕されたため、開発に遅れを取っている。
PEZY-SC4になると1チップで50TFlopsとなり、京コンピュータの100倍の性能が50ラックに収容できると創業者は主張する。メモリバンド幅はTCIをさらに高速化し、25TB/sとする。このチップで100GFlops/Wを目指す。これが可能であればPEZY-SC4を2個搭載したPCIeボード1枚で100TFlops、消費電力は1kWとなる。
PEZYグループは、このTCIの特許の実施権を取得して特許自体の取得契約も締結しており、系列のUltraMemory社がTCIを使う超広帯域の3D積層DRAMの開発を行っている。
https://www.yumpu.com/en/document/read/54903858/-/...

━━組み込みAI向け半導体、専用チップ

技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)は、NEDOによる「2nm世代半導体技術によるエッジAIアクセラレータの開発」という名目の中で
組み込みAIソフトウェアに最適化した専用AIチップ(行列乗算最適化)の開発を、ラピダス、東京大学、産総研の三者が連携していくことを2024/02/10に発表した。
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20240210-2...

半導体製造装置メーカーや材料メーカー、世界のSoC設計メーカーなどと強力に連携していくことで、日本の凋落した半導体産業を最短で復活させることを目標にしている。
具体的には2nmプロセスウェアの技術をIBMから提供してもらう。そしてSoCやCPU内部のアーキテクチャ設計を加Tenstorrent(CEO:ジムケラー)に委託し、半導体製造技術はベルギーのimecと技術提携をする。
微細化だけでなく、将来の先端技術と予想される裏面配線技術や3D積層技術、GAA構造、加えて次世代半導体用材料の開発をNIMSや理研を含んだ研究拠点が進めていく方針となっている。

これらは経済産業省がレモンド米国商務長官と行った「日米商務・産業パートナーシップ(JUCIP)」の第1回閣僚会合にて行った、半導体技術関連の日米共同タスクフォースの取り組みの一環である。
日米経済政策協議委員会(EPCC)共同声明

━━ブロックチェーン技術の利活用

NTTデータや富士通といったITベンダー各社は、個人間送金や企業間送金において、「全国銀行データ通信システム」のシステムにブロックチェーンを導入する実証実験を行っている。
実証実験では、全銀ネットが発行する銀行間資金決済専用のデジタル通貨を用いる。
各銀行からの申請に基づき、全銀ネットが各銀行向けの決済用デジタル通貨を、ブロックチェーンを用いた新銀行間決済プラットフォーム上で発行する。
新銀行間決済プラットフォーム上において、決済用デジタル通貨の発行・流通・回収までの流れを確認する。
https://pr.fujitsu.com/jp/news/2018/10/29-1.html
またNTTデータは、ブロックチェーンを活用した「貿易情報連携基盤システム」を構築し、輸出入者・フォワーダー・通関業・陸運業・ターミナル・船会社・銀行を含めた貿易手続きに関わる事業者間で、貨物や手続きなどに関する正確なデータをセキュリティが担保された形で共有できる仕組みを提供する実証試験を進める。
また同社が長らく設計運用してきた、輸出入・港湾関連情報処理システム（NACCS）とのデータ連携を、実証実験後に検証する。

東北電力は、個人事業者らが蓄電した再生可能エネルギー由来の余った電力を個人同士で売買できるように、P2P電力取引の実証実験を東芝とともに進めている。また取引の記録にブロックチェーンの技術を活用する。

━━ドローン、IoT運用自動化基盤

NTTデータは、長年培ってきた有人航空管制システムの運用知見をもとに、複数ドローンの遠隔制御と運航管理、ドローン飛行空域の交通管理を実現するパッケージソフトである「airpalette® UTM」を開発している。
飛行の許可・承認申請業務を効率化するドローン情報基盤システム（DIPS）も構築している。
2020年3月、東京電力パワーグリッドと日立製作所およびNTTデータの3社は、ドローンが送電線を避けて安全に飛行できるようデータ共有を行うため「グリッドスカイウェイ有限責任事業組合」を設立した。
ドローンを利用したインフラ設備点検の高度化と災害対応におけるレジリエンス強化を目的とする。

日本国内の多くのドローン事業者は、衝突回避を実現できる3DセンサーシステムやGPSが無い環境でも自律航行できるナビゲーションソフト、画像認識AIを搭載した高度なドローンの運用を各ユーザーに推奨している。
NEDOや日本無線、株式会社ACSLといった国内のドローン開発組織は、無人航空機の衝突回避に関する運航手順をフローとして定める国際規格の策定を行っている。
海外ではすでに、skydioやParrot、インテルやスイスの大学といった組織が障害物を高速で回避できるAIシステムとルート決定システムをドローンに搭載しているため、国内の事業者はこういった製品を購入し、産業に応用している。
2024年、株式会社ACSLは防衛省の外局である防衛装備庁が実施した入札に伴い、同社の小型空撮機体「SOTEN（蒼天）」を納入する大型案件を受注した
https://www.drone.jp/news/2024031411352983468.html

また同じNTT系列である、NTT CommunicationやNTTドコモといった通信企業は、ドローンやラズパイといったIoT機器を4G+5G経由で遠隔管理するための専用プラットフォームの開発運用、
および専用SIMカードとIoT向け回線「IoT Connect Mobile® Type S」の提供を行っている。

エッジAIを搭載したRaspberry Piを監視カメラとして利用し、それらの映像を集中監視できるプラットフォームを構築中である。河川や家畜、防犯目的として利活用を進めている。
またこういったプラットフォームは、建設現場や防犯・配送などのロボットの遠隔監視基盤としても利用可能である。Azure IoTやAWS Cloudといった外部クラウドとのデータ保管連携も可能となっている。
メカトラックス株式会社は、Raspberry Pi専用の4GLTE通信モジュールを装着可能な形で設計し販売している。
https://mechatrax.com/products/4gpi/

━━自動運転の動向

日本国内では、2023年4月1日より改正道路交通法が施行され、いわゆる「レベル4」の自動運転が高速道路などの特定条件下において解禁されている。
宅配ロボットなどは届出制の「遠隔操作型小型車」という扱いになる。また内閣府が高精度な位置測位ができるGPSや、国土交通省等が自動運転専用高速車線、双方向通信信号機などのインフラを整えようとしている。
日産自動車は、米国Google親会社傘下のWaymoと共同で、自動運転向け人工知能の開発や必要な技術仕様、各国の法制度や道路交通事情などを調査するための独占契約を発表している。
同時に日産自動車は、イスラエルのモービルアイとも契約を結んでおり、自動運転向け画像認識＆判断を行うチップの供給と実装を共同で行っている。
モービルアイのEyeQ5チップは、画像分類ニューラルネットを実行するための専用演算加速器や、CPUなどを統合したSoCとなっており、必要に応じてミリ波レーダー等の追加センサーの情報も取り込むことができるようになっている。SONYがモービルアイに対して、イメージセンサーの供給を行っている。

加えて日産自動車は、全国の緊急コールセンター通信機能搭載車両や自動アップデート対応車両とのネット接続を管理するため、MicrosoftのAzureを採用して一括管理を行っている。
通信事業者として、NTTドコモの回線を採択している。日産は、自動運転操作のコントロール連携電子制御ユニットやセンサーの開発で日立と協業している。
日産自動車は、日本全国の高速道路や主要国道などの3次元マップを作製するため、モービルアイやゼンリンと共同事業を立ち上げている。
日立製作所は、悪天候の影響を受けることなく障害物を検知するため、量子レーダーカメラの開発を行っている。

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