━━汎用人工知能(AGI)の研究動向 "Research trends in artificial general intelligence" "通用人工智能的研究趋势" "强人工智能的研究趋势" "Strong AI"

2016年、中国国家元首は全国人民代表大会において「China Brain Project(中国脑计划)」の発足を承認。
一体两翼」と題し、脳の基本動作原理の解明や脳&神経疾患の治療、研究から派生したコンピューティング技術など、それぞれの脳研究を中国政府が強力に推進していくプロジェクトである。

中国科学院神経科学研究所北京脑科学与類脑研究中心(CIBR)を中核拠点とし、各都市の生物学研究所,工科大学が一体となって研究を進めている。
2016年〜2030年までの15年計画である。

有力な研究対象としてマカクザル脳が挙げられている。
https://36kr.com/p/5062631

これに並行して、China Brain Projectの研究成果を汎用人工知能のアーキテクチャとして落とし込むプロジェクト「Brain Science and Brain-Inspired Intelligence」がスタートしている。
研究開発は2013年6月に設立された中国科学院自动化研究所(CASIA)のCognitive Brain Modeling Group(类脑智能研究中心)のYi Zeng(曾毅)氏が指揮している。
https://github.com/BrainCog-X

このプロジェクトではCASIA Brain Simulatorという脳シミュレーターを段階的に開発しており、既にネコ脳部位別シミュレーション,及びマウス海馬シミュレーションに成功している。

動画

このプロジェクトで得られた成果は、百度(バイドゥ)や騰訊(テンセント)といった大手IT企業が進めるAI開発プロジェクトに応用される予定である。

清華大学データマイニング研究部と北京智源人工智能研究院(BAAI)は共同で、Transformerを利用して文章から動画を生成できるAI「CogVideo」を開発した。
またテキストから画像を生成するCogView2も開発している。
https://github.com/THUDM/CogVideo

━━ハードウェア

  • 崑崙(Kunlun)
  • ニューロモーフィックチップ
  • 量子コンピューター
Baidu Create 2018にて、深層学習の特徴である「行列演算」に特化した専用チップ「崑崙(Kunlun)」の開発を百度(バイドゥ)が発表している。
260TOPSの処理速度を100Wで動作させることに成功している。倍精度ではなく単精度で演算させる。
崑崙で構成されたスパコンが百度社内で稼働しており、機械学習の研究そのものに利用されている。


ニューロモーフィックチップ(脳型チップ)の研究開発は主に清華大学が進めている。
2019年8月、Bo Zhang(张钹)氏率いる「清华大学 类脑计算研究中心」は「天機芯(Tianjic)」の開発に成功したと発表した。

清華大学は、Googleと技術開発協定を結んでおり、Google本社に勤めている中国人技術者も、この開発に関わっていると見られる。

量子コンピューターは主に中国科学院,阿里巴巴集団(アリババ),清華大学,中国科学技術大学といった組織が開発を進めている。
2015年7月、アリババは中国科学院と共同で、量子コンピューターの研究施設「量子信息与量子科技創新研究院」を上海に設置した。
既にアリババ傘下のアリババクラウドが、クラウド上で11Qbitのプロセッサを稼働させるサービスを開始している。
また、中国科学技術大学が「光量子コンピューター」の開発に取り組んでいる。
2020年12月、研究リーダーのPan Jianwei(潘建偉)氏は、プロトタイプ「九章」の構築に成功し、量子超越性を達成したと主張した。
5千万サンプルのガウシアンボソンサンプリングの解を200秒で求めることができたという。Googleの「Sycamore」より100億倍速いという。
https://science.sciencemag.org/content/early/2020/...

━━スーパーコンピュータ

中国国防科学技術大学が運営する国家超級計算天津中心が、エクサ級スパコンの開発を進めている。
公式の情報ではないが、中国は「天河三号(Tianhe-3)」および「OceanLight」と呼ばれるスーパーコンピューターシステムを2021年3月までに完成させたという。
いずれも、全ラックでピーク時性能1.3ExaFLOPS以上を達成する計算性能を有しているという。
https://www.hpcwire.jp/archives/53951
完成したシステムは、中国科学院や清華大学等の機関が脳のシミュレーション等に利用する予定である。

━━社会基盤と特化型AI

中国では、政府直下の軍事研究院だけでなく、多くの巨大テック企業が社会基盤実装可能な特化型AIを細かくリリースしている。それぞれの組織が得意とする領域を以下に列挙する
またそのための国家的な財政的支援を潤滑に行う国家政策を2015年から段階的に中国政府は発足している。そしてそれぞれの民間組織に重点開発課題を与えている。


検索大手「Baidu」
  • 自動運転と3D画像認識
  • マルチモーダル大規模言語モデル
通販&クラウド大手「Alibaba」
  • 社会信用スコアに特化した機械学習アルゴリズム
  • 物流倉庫管理ロボットの開発
メッセンジャー&ゲーム大手「Tencent」
  • 医療診断向けAIとゲーム向けAI
  • 会話を学習し応答する自然言語処理
携帯端末と移動通信基地局大手「Huawei」
  • スマートシティ向けセンサー通信技術とビッグデータ分析技術
  • 船舶の運航管理、湾港の積み下ろしを自動化する技術

ベンチャー企業「SenseTime」
  • 画像認識や自然言語処理を連携させたソフトウェア、インターフェースの外部提供
ベンチャー企業「Megvii Technology」
  • 高精度な顔認識と監視カメラ向け行動分析AI

━━中国政府の科学技術政策


中国共産党、及びその上層部にあたる中央政治局常務委員会のメンバーは、人工知能を始めとした情報科学に対して非常に理解を示しており、
BATH等のIT企業や中国科学院等に潤沢な科学技術国家予算を割いている。シンギュラリティやトランスヒューマニズムといった西側諸国発の概念にも興味を示していると思われる。(事実、デザイナーベイビー等の実験も国家主導で行われていたと噂される)
「中国製造2025」だけでなく、China Brain Projectや汎用人工知能の開発も、中華人民共和国国務院に属する中華人民共和国科学技術部(中国科技部)がプロジェクトの進捗全体を管理していると思われる。
中国科技部の部長は王志刚氏である。
元Google取締役のエリックシュミットは、中国が米国のAI技術に非常に速く追いつく、もしくは既に追い越しているだろうと警鐘を鳴らした。
AI技術を悪用される危険性も、ヘンリーキッシンジャーと共同で指摘した。
アメリカ国家安全保障局(NSA)の元顧問弁護士であるグレン・ガーステル氏は「中国はAIを活用して、健康記録からクレジットカード、パスポート番号から親子の名前や住所まで、ほぼ全てのアメリカ人に関する書類を作成することができます。中国が活用するAIと中国政府のハッカーが合わせれば恐ろしい国家安全保障上の脅威になります」との警告を発している。
英米が主導するファイブアイズや米Microsoftも、AIを利用したサイバー攻撃、データ収集と侵入、軍事兵器の遠隔操作、生物化学兵器の開発に警鐘を鳴らしている。

動画


米国の研究動向


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